所長のコラム

はじめに

皆さん、お元気ですか。私は1月の繁忙期に無理したせいなのか、気合いが入っていなかったのかわかりませんが、2月初旬にインフルエンザA型にかかってしまいました。皆さん、くれぐれも健康管理には気をつけて、ご自愛ください。

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2月コラム 真の継承

ここ最近、中小企業における事業継承問題が頻繁にメディアで取り上げられています。その問題のほとんどが後継者不在による事業継続困難とされています。自分はまだまだ現役真っ直中と言われた中小企業創業者の方々も既に60歳を超えていらっしゃいます。体力の衰えが気力に影響を及ぼしてくるのも事実でしょう。私もよく事業継承の相談を受けるのですが、なかなか話が進みません。なぜか。相談者は株式や事業用財産など「モノ」の継承の話に終始するケースが非常に多いからです。流行のM&Aもありますが、これはあくまで事業継承の手段の一つです。もちろん「モノ」の継承がうまくいかなければ事業継承は立ちいかなくなります。

しかし、真の事業継承をするためには、形だけではない「ココロ」の継承がかかせないと思います。本当に難しい問題です。先代が後継者を本当の意味で認め、そして、その後継者も本当の意味で先代を尊敬し、覚悟を決めて立場を引き継ぐという心構えがなければ、真の継承はできないのではないでしょうか。こんなことを考えたのには、きっかけがあります。それは、今年1月6日にNHKで放映された番組『父と子 市川猿翁・香川照之』でした。

三代目市川猿之助(現二代目猿翁)と女優・浜木綿子との間に生まれた香川照之。幼い頃に両親が離婚し、父に会うことすら許されずに育ちました。東大文学部を卒業後、俳優の道に進み、今や実力派俳優として立派に一本立ちしています。本当に彼の演技は何とも味があり私も大好きな俳優の一人です。そんな彼が、何故、46歳にして突然、歌舞伎の世界に身を投じたのか。傍から見れば全く理解できません。しかし、彼は断絶した父子関係の中で「父親とは一体どんな存在なのか」、「自分は何のために生まれ、何のために生きていくのか」その答えを見つけるべく苦悩していました。そして、彼は気付いたのではないでしょうか。自分は歌舞伎の世界で生きていくために生まれてきたのだ、と。そんな彼を父・市川猿翁は受け入れ、脳梗塞で麻痺をかかえた身体にムチ打ち、必死に稽古をつけます。その父と子の姿を見て、私も涙しました。金や名誉ではなく、真摯に父と向き合い歌舞伎に打ち込む香川の姿。40年間の時を経て立派に成長し独立した息子に何とか歌舞伎のすべてを伝えようと必死な猿翁の姿。まさにこれが真の継承だと私は感じました。



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鈴木伸治公認会計士・税理士事務所/税理士 岡崎/岡崎市 税理士


岡崎市 会計士 鈴木伸治公認会計士・税理士事務所